オークション用途の検討(イベント物販の拡張)

「特定の時間だけ入札できる」オークションを、イベント物販の拡張として使えるかを整理する。

本ドキュメントは将来の可能性の整理。現行のリーグ戦パイロット(pilot-league.md)では実施しない。


1. 結論

  • 使える。 ただしカートの延長ではなく、ロット(出品)+入札+時間窓+落札の追加モジュール。
  • リーグ戦の物販との相性は良い(サイン入りユニ、限定グッズ、一点物、文脈)。
  • 最初は サイレント(封印入札)+時間窓+受取時に検品+Terminal決済 に絞る。
  • 「オークション事業」ではなく、イベント内の高単価販売機能として扱う。

2. 向く / 向かない

向く 向かない
イベント限定・一点物・高単価 大量SKUの通常物販
サイレント/タイムド ライブオークション(司会・競り)
受取時決済(会場で受け取る) 遠隔・配送前提のオークション
少人数・閉鎖的・文脈がある 大規模・高頻度・匿名

3. 機能要件

機能 内容
ロット 開始価格、最低刻み、予約価格(reserve)、即決価格
入札 封印(サイレント)/公開、最大額、代理入札は任意
時間窓 ロットごとの開始・終了。サーバー時刻で判定
延長 終了直前の入札で延長(anti-sniping)
落札 最高額、予約価格到達、同額時の先着
次点 未払い・辞退時に次点へ(任意)
支払 受取時に Terminal。検品後に決済
通知 競り負け、落札、期限間近
入札者識別 会員コード/連絡先(落札連絡のため)

4. 時間窓の設計(「特定の時間だけ」)

  • サーバー時刻で open/close を判定する(クライアント時刻を信用しない)
  • ロット単位・イベント単位の両方を設定可能に
  • 終了直前の入札で延長(例:最後の2分に入札→2分延長)
  • 締切後の入札は 409 WINDOW_CLOSED
  • 表示は JST、保存は UTC
  • 入場制限(特定時間だけ画面を開ける)も同じ仕組みで実現

5. 状態遷移

SCHEDULED → OPEN → CLOSED → WINNER_DECIDED → PAID → PICKED_UP
                │        │
                │        ├→ NO_BID / RESERVE_NOT_MET
                │        └→ NO_PAYMENT → 次点 or 再出品
                └→ CANCELED
  • OPEN の間だけ入札可能
  • CLOSED 後に落札判定(バッチ or 締切イベント)
  • PAID は受取時の Terminal 決済
  • NO_PAYMENT は受取期限で判定

6. データモデル(追加分)

PK SK 主な属性
EVENT#{eventId} LOT#{lotId} 開始価格、刻み、reserve、即決、openAt、closeAt、状態
LOT#{lotId} BID#{bidId} 入札者、金額、時刻、封印/公開
LOT#{lotId} META 最高額、最高入札者、入札数、延長回数
BIDDER#{bidderId} META 連絡先、同意、制限
EVENT#{eventId} WIN#{lotId} 落札者、金額、支払状態、受取状態
  • 入札は条件付き書き込み(現在の最高額+刻み以上のみ受理)
  • bidId で冪等化(二重送信防止)
  • 監査ログ(誰が・いつ・いくら)

7. 同時性・競合

リスク 対策
同時入札で最高額が壊れる 条件付き更新/楽観ロック
ホットロットの集中 キューで直列化、リトライ
終了間際の大量入札 延長ルール、サーバー時刻
二重入札 bidId 冪等
不正・談合 入札履歴の監査、規約、必要なら本人確認

8. 支払・受取

  • 落札者はブースで検品 → Terminal 決済 → 受渡
  • 未払い・ノーショー:受取期限を過ぎたら次点繰上げまたは再出品
  • 返金・取消のルールを事前に明文化
  • 高額・未成年・転売の扱いを決める

8.1 高額・記念品ロット(決勝牌など)

「雌雄を決した牌」「優勝を決めた局の牌」のような物語のある一点物は、通常の物販より桁違いの値が付き得る。ただし価値の源泉は真正性と文脈。

価値の源泉

  • 物語(どの試合・どの局・誰が・何を決めたか)
  • 一点物(現物は1つ)
  • タイミング(決勝直後・優勝セレモニー)
  • 証明(リーグ/チーム/選手のお墨付き)
  • 展示(会場・配信で見える)

真正性の担保(ここが商品)

  • チェーン・オブ・カストディ(試合終了→回収→封入→保管→受け渡しの記録)
  • 試合映像・記録との紐付け
  • リーグ/チーム/選手による証明書(COA)
  • シリアル/封緘/ケース、改ざん防止
  • 受け渡し時の本人確認と記録

設計

  • 決勝直後に締切。会場展示+配信で告知
  • 封印/公開、最低刻み、予約価格、延長(anti-sniping)
  • 事前登録+本人確認+入札保証金(高額・いたずら防止)
  • 支払:Terminal の上限を超える場合は販売主体の口座へ銀行振込(当社は資金を持たない)
  • 受け渡し:会場で本人確認+証明書、または保険付き配送

リスク

  • 真正性への疑義は価値をゼロにする。証明と保管が最優先
  • 所有権(リーグ/チーム/選手の誰の物か)と販売主体を先に確定
  • 選手・リーグの意向(記念として残したい場合がある)
  • 高額決済・与信・返金・転売・保険
  • 公正性(自作入札・談合の禁止、入札履歴の監査)

位置づけ

  • 常用の収益源ではなく、フラッグシップ1点でPR・実証に使う
  • 「コンテンツ→オークション」の説得材料として強い

8.2 観客参加型(会場)オークション

基本

  • 会場のQR(席・入口・スクリーン)から PWAで参加。インストール不要
  • 入札はワンタップ。最低刻みを自動表示
  • **自動入札(max bid)**を用意し、見ていなくても参加できる
  • 会場スクリーンに現在額・残り時間・リーダーを表示
  • 試合の節目(決勝局の後・休憩・セレモニー)に締切

2層に分ける(気軽さと高額対応の両立)

層 対象 参加条件 決済
気軽 低額グッズ 席番号/ニックネーム 会場で Terminal
フラッグシップ 決勝牌など高額 事前登録+本人確認+保証金 Terminal/販売主体への銀行振込
  • 「気軽」は摩擦を最小化(登録なし・1タップ・短い時間窓)
  • 「フラッグシップ」は不正防止を優先(登録・保証金・上限)
  • 同じアプリで qualification フラグにより切り替える

リモート(今回はやらない)

  • 理由:本人確認・決済・受け渡し・不正・返品の負荷が一気に上がる
  • 会場の熱と「その場にいる人だけ」の特別感が価値
  • 将来:事前登録+保証金+保険付き配送で限定開放

リアルタイム

  • 入札の即時反映(WebSocket/SSE、または1秒ポーリング)
  • 競合は条件付き更新、時間はサーバー時刻
  • 会場スクリーンは専用ページ(管理画面から操作)

運用

  • 受付・決済・受け渡しの窓口を1つに集約
  • 締切・延長(anti-sniping)・落札・次点のルールを事前に明文化
  • 障害時:紙の入札/スタッフ端末で継続

リスク

  • いたずら入札(高額は保証金、低額は電話/会員コードで抑止)
  • 会場の通信(予備回線、紙のフォールバック)
  • 支払い失敗・ノーショー(次点・再出品)
  • 真正性・公正性(監査ログ、自作入札の禁止)

9. 法務・規制(要確認)

論点 内容
古物商 「誰が・どう売るか」で要否が変わる(§9.1)
古物競りあつせん業 競りの方法で売買をあっせんする営業は許可が必要になり得る
特定商取引法 通信販売の表示義務(氏名、価格、支払、返品)
景品表示法 景品・賞品として扱う場合の上限・表示
税 消費税、源泉徴収(懸賞・賞金の扱い)
公正性 談合・代理入札・自作入札の禁止を規約で明示
資金 販売主体(リーグ/チーム/物販会社)の口座へ。当方はソフト提供で資金を持たない
ライセンス 選手名・ロゴ・サインの許諾

9.1 古物営業法(試合球の例)

  • 試合で使ったボールは「一度使用された物品」=古物に該当する
  • 許可が必要かは「誰が・どう売るか」で決まる
売り方 古物商許可 考え方
チームが自分たちで使ったボールを売るだけ 不要の可能性が高い 「古物を売却することのみ」を行う営業は古物営業から除外
選手・第三者から預かって販売(委託) 必要 委託売買
買い取って売る 必要 古物営業
交換する 必要 交換
オークションのあっせんを業として行う 古物競りあつせん業の許可 競りの方法によるあっせん
  • 「新品」でも「使用のために取引されたもの」は古物に該当し得る(新品=安全ではない)
  • 古物商の義務:古物台帳、本人確認、記録の保存、管理者の選任、行商・競り売りの届出
  • 別都道府県のイベント:仮設店舗・行商・競り売りの届出の論点がある
  • 当社は販売主体・あっせん主体にならない(ソフト提供に徹する)。契約・規約で役割を明記する
  • 最終判断は所轄の公安委員会・弁護士に確認する

例:チームが試合球を自ら出品するのは「自己使用品の売却」に近く、許可不要の可能性が高い。一方、選手から預かって代わりに売る、物販会社が買い取って売る、当社が入札をあっせんする、のいずれかなら許可の検討が必要。

「オークションを運営する事業者」になるのか、「ソフトを提供するベンダー」なのかで規制の当たりが変わる。資金と販売主体を持たない方針を維持する。


10. リーグ戦との組合せ

  • 試合前にロット公開 → キックオフ前/ハーフタイム/試合後に締切 → ブースで受取
  • コンテンツ文脈(選手・試合・限定)が強く、通常物販より単価が上がる
  • 一点物・サイン入り・記念品と相性が良い
  • 受取時決済なので、落札者が会場にいる前提。遠隔落札は対象外

11. KPI

指標 見たいこと
入札率(ロットあたり) 出品の魅力
平均入札数 競争の強さ
落札額 / 開始価格比 価格形成
受取率・未払い率 運用の健全性
次点繰上げ率 未払いの影響
参加率(来場者比) 導線の強さ
滞在時間 コンテンツとの相乗効果

12. リスク

リスク 対策
同時入札の競合 条件付き更新・直列化
未払い・ノーショー 受取期限・次点・再出品
公正性・談合 規約・監査・本人確認
法務(古物商・特商法) 事前確認
スタッフの習熟 1画面・マニュアル
通信障害 フォールバック(紙・口頭)
高額・転売 数量制限・本人確認

13. 未確定

  1. 封印入札か公開入札か
  2. 代理入札(max bid)を入れるか
  3. 延長ルール(何分前の入札で何分延長)
  4. 次点繰上げの有無
  5. 支払・受取の期限
  6. 古物商・ライセンスの要否
  7. 入札者の本人確認の強さ

14. 結論

  • イベント物販の拡張として有望。特にリーグ戦の一点物・サイン入り。
  • ただし「オークション事業」ではなく、イベント内の高単価販売機能。
  • 最初は 1リーグ・数ロット・サイレント・時間窓・受取時決済 で検証する。
  • 法務(古物商・特商法)と未払い対応を先に固める。